2017年9月26日火曜日

国際教養AO入試 , 早稲田国際教養学部(SILS), Posing for the Painter - rewrite -

問2  筆者のマーチン・ゲイフォードは「ルシアン・フロイドにとって彼が描くものは全て肖像画なのだ。」と述べています。筆者はこれによって何を意味していますか。答えを自分の言葉で英語で答案用紙の該当箇所に書いてください。

本文該当岡所
His peculiarity in the history of art is that he is aware of the individuality of absolutely everything. In his work, nothing is generalized, idealized or generic. He insists that the most humble and to most people nondescript items have their own characteristics. 美術史における彼の特異性は彼がありとあらゆるものに個性を見出すことである。彼の仕事においては何も一般化したり理想化したり遺伝でかたずけられたりしない。彼は最もつまらない(大抵の人にとっては)最も目立たないものでも独自の性格的特徴があると主張する。 At first I thought of sitting as being similar to a visit to the hairdresser’s, but now it seems more intense. The experience is like no other in that the sitter that is, me has become a mystery: a puzzle to be solved. 絵のモデルになることを私は最初床屋の客になるのと似たようなものだと思っていたが、今はもっと真剣なことに思える。モデルすなわち私が謎解きの謎になるという点で、この経験は真剣そのものだった。 Lucian Freud leans forward sometimes, shading his eyes like a sailor in search of land. His demeanor when painting is that of an explorer or hunter in some dark forest. ルシアン・フロイドは時々陸地を探す船乗りの様に目の上に手をかざしながら前方に身を傾ける。絵を描く時の彼の物腰は森の奥深くを行く探検家か猟師の物腰である。

解答のポイント例
筆者が「ルシアン・フロイドにとって彼が描くものは全て肖像画なのだ。」という時、彼はルシアン・フロイドは対象の歴史とかけがえのない存在を描く作家だと言っているのだと思う。筆者はこの画家は全てのものの個別性を意識しており、彼にとって何も一般化したり理想化したり遺伝で説明できず、どんな無個性なものにも個性があると述べている。このことから、この画家は絵の対象の個性すなわち生活史とその結果に着目していると考えられる。筆者によればこの画家は筆者の肖像画に半年かけ、眉と鼻筋回りを描くのに40分かけており、描いている時のコミュニケーションが描く作業の一環であった。つまり画家は数か月間一回40分かけて対象(筆者)と関わりながら筆者の顔の皮膚とその下の筋肉の状態とその動きに彼の人生の跡とその瞬間の彼の心の状態、ひいては彼の魂の性質を読み取り、解釈し、それを自分のスタイルで表現したということになる。人間の顔には多数の表情筋があり、それらはその人物の生活史およびその瞬間の状態により様々な様相を呈するだろう。人によりそのあらわれ方は千差万別だろう。画家はその微妙な違いを愛で、その記念をキャンバスに定着している。よく笑って生きてきた人の目じりの筋肉や真摯に生きている人の眉根はその事実を彼の前に示すのだ。このテストの答案にも同じことは言えるだろう。同じ正解を書いても回答者の今までの生き方が語彙や文体、句読点、解答欄の使い方全てに現れる。


問3  今日のデジタル技術は速さや効率、短期間で結果を出すことへの期待を生み出しています。ルシアン・フロイドの仕事の仕方は依然として重要で可能、あるいは望ましいでしょうか。答えを自分の言葉で英語で答案用紙の該当箇所に書いてください。

本文該当箇所
His attitude is a combination of audacity with caution: an intense determination to get the thing exactly right. Often before making a stroke Lucian expels air in a little sigh with the effort of concentration. The same attention is applied to the mixing of colors:彼の態度は慎重な大胆さである。完璧に成し遂げようとする強烈な決意なのだ。しばしば塗る前に集中しようとして小さなため息をついて息を吐きだす。絵の具を混ぜるのにも同様の注意がなされる。…as though while building a house of cards he has just successfully placed a particularly tricky one. まるでトランプのお城を作っていて特に難しい一枚をうまく置いてのけたかの様にOnce or twice he is about to apply a stroke, then withdraws, considers again, then re-scrutinizes, measuring my face with little mapping movements of the brush, ... 一度か二度、彼はひと塗りしようとするところで止め、考え直し、筆で測る動きを少ししながら私の顔を測りながら再吟味する。When I get up and stretch my legs after about forty minutes of work, despite what seemed to be plenty of vigorous activity with the brush, little seems to have changed on the canvas. By the end of the evening two eyebrows have appeared, and a little flesh around the bridge of my nose. 40分の仕事後、私が立ち上がって伸びをする時、十分盛んに絵を描いたように思えたにもかかわらず、キャンバスはほとんど変わっていないようだった。日が暮れるまでに眉2本と鼻柱周りの肉が少し出現していた。 The events described here occurred in late November 2003 and the portrait was completed on the 4th of July 2004. ここで述べられている出来事は200311月に起こった。そしてこの肖像画は200474日に完成した。

解答のポイント例
ルシアン・フロイドのような仕事のスタイルは効率重視の現代の職場では一見通用しなさそうだが時間をかける必要のある仕事も存在するはずだと思う。現代社会は処理することによって回っている社会であり、大きく間違っていなければ処理スピードが速いほど適応しているとされる。顔の見た目からその人物がどのような人物であるかを読み取る処理は進化した顔認証AIによれば一瞬もかからないだろう。従ってこの画家のように長い時間をかけて結果を出す仕事は現代社会のほとんどの場面で通用しないだろう。しかし、山の湧き水のように短時間で処理が不可能な仕事も社会では価値をもつ。山が数十年かけて雨水から絶妙の割合で鉱物の溶け込んだおいしい地下水を生み出すように画家が行っているのは処理ではなく創造である。処理・分析は作業の一工程にすぎず、それによって得られた情報を画家は絵の具と筆さばきによってキャンバス上に再構築するのだが、その過程で画家自身の魂と、画家とモデルになった人物の魂の交流の要素が作品に加えられる。例えば画家自身の特性や回を重ねて長時間一緒に過ごすうちに生まれた画家とモデルの関係が持つ情緒は絵に反映されるであろうし、ある時二人の間で意味深い交流があった場合、その瞬間のモデルのわずかな表情の変化の特徴を筆者は捕らえて表し、モデル本人にもそれは感知され、二人の人生の記念として唯一無二のその人物の肖像画が出来上がるだろう。このような、時間をかけることによってしかできない仕事にも価値があり、効率重視の職場にもそういった仕事をするものの居場所もあるのではないかと考えられる。例えばサービス業では特定地域の客層と長年接してきた人の経験およびその人の存在自体に価値があり、そのような経験を持つ人がロボットと共に仕事をすることで会社はより良いサービスができるだろう。また、工芸品のように同様のものが大量生産されているにもかかわらず今でも流通している商品があることを考えるとルシアン・フロイドの仕事の仕方は今でも重要で可能であり、望ましい場合もあると考えられる。


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