2017年9月18日月曜日

国際教養AO入試 , SILS, Posing for the Painter

問2  筆者のマーチン・ゲイフォードは「ルシアン・フロイドにとって彼が描くものは全て肖像画なのだ。」と述べています。筆者はこれによって何を意味していますか。答えを自分の言葉で英語で答案用紙の該当箇所に書いてください。

解答のポイント例
筆者が「ルシアン・フロイドにとって彼が描くものは全て肖像画なのだ。」という時、彼はルシアン・フロイドは対象の歴史とかけがえのない存在を描く作家だと言っているのだと思う。筆者はこの画家は全てのものの個別性を意識しており、彼にとって何も一般化したり理想化したり遺伝で説明できず、どんな無個性なものにも個性があると述べている。このことから、この画家は絵の対象の個性すなわち生活史とその結果に着目していると考えられる。筆者によればこの画家は筆者の肖像画に半年かけ、眉の一部と眼窩回りを描くのに40分かけており、描いている時のコミュニケーションが描く作業の一環であった。つまり画家は数か月間一回40分かけて対象(筆者)と関わりながら筆者の顔の皮膚とその下の筋肉の状態とその動きに彼の人生の跡とその瞬間の彼の心の状態、ひいては彼の魂の性質を読み取り、解釈し、それを自分のスタイルで表現したということになる。人間の顔には多数の表情筋があり、それらはその人物の生活史およびその瞬間の状態により様々な様相を呈するだろう。人によりそのあらわれ方は千差万別だろう。画家はその微妙な違いを愛で、その記念をキャンバスに定着している。よく笑って生きてきた人の目じりの筋肉や真摯に生きている人の眉根はその事実を彼の前に示すのだ。このテストの答案にも同じことは言えるだろう。同じ正解を書いても回答者の今までの生き方が語彙や文体、句読点、解答欄の使い方全てに現れる。


問3  今日のデジタル技術は速さや効率、短期間で結果を出すことへの期待を生み出しています。ルシアン・フロイドの仕事の仕方は依然として重要で可能、あるいは望ましいでしょうか。答えを自分の言葉で英語で答案用紙の該当箇所に書いてください。

解答のポイント例
ルシアン・フロイドのような仕事のスタイルは効率重視の現代の職場では一見通用しなさそうだが時間をかける必要のある仕事も存在するはずだと思う。現代社会は処理することによって回っている社会であり、処理スピードが速く正確であるほど適応しているとされる。目の周りの見た目からその人物がどのような人物であるかを読み取る処理は進化した顔認証AIによれば一瞬もかからないだろう。従ってこの画家のように長い時間をかけて結果を出す仕事は現代社会のほとんどの場面で通用しないだろう。しかし、山の湧き水のように短時間で処理が不可能な仕事も社会では価値をもつ。山が数十年かけて雨水から絶妙の割合で鉱物の溶け込んだおいしい地下水を生み出すように画家が行っているのは処理ではなく創造である。処理・分析は作業の一工程にすぎず、それによって得られた情報を画家は絵の具と筆さばきによってキャンバス上に再構築するのだが、その過程で画家自身の魂と、画家とモデルになった人物の魂の交流の要素が作品に加えられる。例えば画家自身の特性や回を重ねて長時間一緒に過ごすうちに生まれた画家とモデルの関係が持つ情緒は絵に反映されるであろうし、ある時二人の間で意味深い交流があった場合、その瞬間のモデルのわずかな表情の変化の特徴を筆者は捕らえて表し、モデル本人にもそれは感知され、二人の人生の記念として唯一無二のその人物の肖像画が出来上がるだろう。このような、時間をかけることによってしかできない仕事にも価値があり、効率重視の職場にもそういった仕事をするものの居場所もあるのではないかと考えられる。例えばサービス業では特定地域の客層と長年接してきた人の経験およびその人の存在自体に価値があり、そのような経験を持つ人がロボットと共に仕事をすることで会社はより良いサービスができるだろう。また、工芸品のように同様のものが大量生産されているにもかかわらず今でも流通している商品があることを考えるとルシアン・フロイドの仕事の仕方は今でも重要で可能であり、望ましい場合もあると考えられる。



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