2011年8月7日日曜日

Class Supplement (早稲田国際AO入試 Civic and Ethnic Nationalism)

Appendix Civic and Ethnic Nationalism 解答のポイント

主題:政治によって国家統一を行うcivic nationalism(市民国家主義《拙訳》)は、多民族国家でも市民生活維持の必要性から帰属意識を生むと考えられるが、民族を国家統一の基盤とする民族主義は、事実上大半の国家は多民族国家である点と同一民族内で争いが絶えないという点から非現実的である。

各段落の要旨
第1段落 civic nationalismの説明: 民族ではなく政治的信条でまとまっている国で、主権在民であり民主主義的。18世紀半ばイギリスは既にcivic nationalismで統一された国家だったが、世界中に広まり始めたのはフランス革命とアメリカ独立後。
第2段落 啓蒙主義社会のcivic nationalismと公民権運動: 啓蒙主義社会(17~18世紀ヨーロッパに広まった、宗教ではなく理性によるものの見方)では元々民族が同じかそう振舞っていたのでまとまりやすかったが、これは少数派の人々の権利が認められなかったため。19~20世紀の公民権運動後、西洋はほぼ完全なcivic nationalismによる社会になった。
第3段落 ドイツ民族主義の説明: ナポレオンによる支配でドイツ愛国主義が高まりドイツロマン主義(国家は政治ではなく民衆によってまとまっている)が起こる。
第4段落 civic nationalismの現実性。大半の社会は単一民族でなっておらず、そうであっても争いごとは起こるので法治国家こそが社会をまとめるという主張。 民主主義的手続きに同意することにより、個人は自身の生活を形成する権利と社会に帰属する必要性を結びつける。これにより国家への帰属が合理的な愛着の形をとりうる。
第5段落 民族主義への反論: 民族主義の主張は国家への愛着は選択ではなく受け継ぐものでcivic nationalismのそれより深いというものだが、同民族内で争いがあるという事実により非現実的であり、統一が危うい場合国粋主義体制による武力統一が起こる。

問1 本文に書かれていることからすると次の記述は正しいでしょうか、間違っているでしょうか。解答欄の所定箇所にTrueかFalseと書いて示してください。

a. 部分的には少数派の人々の闘争のおかげでcivic nationalismの実施がやがてより民主主義的になった。 True
本文該当箇所  第2段落後半 上記各段落の要旨参照。
b. 民族主義は民衆の法的権利よりも文化的同一性をより強調する。 True
本文該当箇所 第4段落後半+第5段落前半 特上記各段落の要旨参照。
c. civic nationalismは国家に対する民衆の感情的愛着を認めるので民族主義よりも現実的だ。 False
本文該当箇所 第5段落前半(「民衆の感情的愛着を認める」のはcivic nationalismではなく民族主義)

問2 この文章の作者は民族主義よりもcivic nationalismを明らかに好んでいますが多くの専門かはcivic nationalismにも弱点があるといいます。あなたの意見はどうですか。

考え方 civic nationalismによる統一国家は欧米諸国なので、これらの国々の政治の弱点を考える。アメリカの場合、富裕層の政治掌握、人種差別、貧富の差、移民、宗教の問題などが原因で、政治不参加(低投票率)、デモ(富裕層優遇政策への反発)、メキシコからの移民やイスラム教徒排斥の動きなどが絶えず、国家としてのまとまりを欠く。一方では労働争議や公民権運動の歴史から、いざという時は一般市民が団結して法にのっとった修正を行う。例えば、2008年の大統領選では経済危機を背景に民主党のオバマ氏が驚異的な投票率で初の黒人大統領になった。また、ウインスコンシン州知事が公務員の団体交渉権を剥奪する法案を通過させようとした際、高校生を含む市民が立ち上がり大規模なデモを行い、裁判所による法案の違法性の指摘を導いたりする場合もある。
解答のポイント 賛成の場合: 階級闘争や差別の力は非常に大きく、民主的法治国家は名目に過ぎない。
反対の場合: 投票権があるかぎり、一般市民の実権は保障されているので、状況は次第に改善されてゆく。


問3 国籍はあなたのアイデンンティティーにとってどのように重要ですか?
考え方 identityの構成要素を考えてみて、その中で国籍がどれくらいのウエイトを占めているか考えてみる。
identityの構成要素: 家族・地域社会・国家への所属意識、信条(宗教や思想、価値観など)、社会的地位・職業、履歴(今までの育ち方)。

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