2022年8月26日金曜日

早稲田国際教養学部AO入試 1) Death Penalty 2) Spirit Level - revised -

Day Six   Death Penalty  解答のポイント

ポイント: 死刑廃止への世界的な流れと死刑支持が大多数の日本の世論とのギャップ

問: 日本での死刑廃止に対する自分の考え

 

資料A 日本の死刑に関する世論調査の結果(ジャパン・タイムズ)

第1段落: 日本では死刑支持が圧倒的

85.6%が「不可避」と解答   1994年の調査開始以来最高の数字   凶悪犯罪増加の影響

第2段落:日本での死刑支持増加化傾向

死刑」支持の理由 

1)遺族の感情を考慮 

2)犯人は死を持って罪を償うべき 

3)凶悪犯罪抑止のため

第3段落: 日本での死刑不支持はごく少数で減少傾向

 死刑不支持の理由

1) 犯人は生きて罪を償うべき

2) 冤罪の場合取り返しがつかない

第4段落: 調査方法

 

資料B 死刑に関する数字と事実(アムネスティー・インターナショナル)の各項目から読み取れること

項目1~3: 世界的には死刑は依然として続いている

項目4: 先進国では死刑実施は例外的

項目5~7: 非民主主義の方が頻繁に、容易に死刑を実施

項目8: 民主主義国家のリーダーであるアメリカでは死刑を実施しない例多数

項目9~11: 死刑を廃止した国も多数ある

 

答え方

問題文は、「資料を注意深く調べたうえで」自分の意見を述べるよう指示しているので、資料を使いながら意見を述べる。死刑廃止指示・不支持の理由は資料Aの第2・第3段落及び、資料Bの世界的な死刑廃止への流れを使う。更に自分の考えを付け加えることもできる。

 

解答のポイント例

死刑廃止に賛成の場合: ジャパン・タイムズ(以下JT)の賛成派の3つの理由に反論する形で論を進めてみる。

1)「犠牲者とその家族の気持ち」は、第三者の想像であり、当事者の気持ちは分からないが、生きて改心してもらうことや説明・謝罪を求める人がいるのは事実。これは、JTの反対派の「生きて罪を償うべき」と共通する部分がある。

2)「犯人は死を持って罪を償うべき」は、ハムラビ法典の「目には目を」を思い出させ、刑罰として原始的だと思われる。(因みにハムラビ法典では「お金持ちは目には罰金でよい」となっているらしい。)JTの反対派の「冤罪」の問題がある。これはアムネスティ―・インターナショナル(以下AI)に1973年以来アメリカで138人の無罪が証明されたとあることで補強できる。また、罪を犯した人が真に「怪物」であることは稀であり、死刑より、終身刑や教育による復帰がより良い選択だと考えられる場合が多いかもしれない。更に、死刑は国家による殺人であり、いかなる理由があっても、死刑を行うべきではないという考えも重要。

3)「凶悪犯罪抑止」AIに、10年以上死刑を実施していない国が34か国あるとあり、死刑になる可能性が下がっても、凶悪犯罪が増えなかったことが分かる。死刑を巡る論争でも抑止効果はないことが証明されている。

 

Ideas and Expressions

Although it seems impossible to abolish death penalty when most Japanese feel it is necessary, Japan should abolish it for the following reasons.

1.       Abolitionism is the trend of the world.

2.       Death penalty is morally wrong. It is based on uncivilized thought: An eye for an eye. Humans have no rights to kill other humans. Governments should not kill human.

3.       Death penalty is not practical. It does not work as deterrent. Most criminals are mentally disabled.

4.       False charges should be stopped. Even DNA examinations are often wrong. Decimated life will not come back once the sentence is executed.

5.       Life sentence can be the alternative for compensation and protection of the next victim.

6.       It is unethical to talk about the costs in deciding execution. Actually, death penalty costs more than life sentence. Prisoners are given labor for low wages.

7.       Many convicts repent from the bottom of their heat, and some contribute to the studies of their cases by answering researchers’ questions.

Appendix   Spirit Level

1990年代以降(特に第二次安倍政権の8年間及びコロナ以降) 非正規雇用の増加や自営業の減少、子ども食堂の増加等、格差拡大が進む日本ですが、これに伴う健康・社会問題の増加が、2010年出題のこの問題に使用されているグラフで推測できます。2010年には格差が先進国で最少だった日本ですが、現在はグラフbのどこに位置するのでしょうか。

 

解答のポイント

主題 格差が大きいと(国の豊かさに関係なく)国民は不幸になる

 

本文訳 2つのグラフはある国の (a) 国民総所得 (b) 所得格差 と健康・社会問題を起こす可能性の関連性を示している。「健康・社会問題指標」は以下の問題に関して国際機関(世界銀行、経済協力開発機構、国連)が得たデータから算出されている: (1)平均寿命 (2)10代の出産 (3)肥満 (4)精神病 (5)殺人 (6)投獄率 (7)人間不信 (8)社会の流動性 (9)教育 (10)幼児死亡率 グラフbの線は回帰直線である。すなわち2要素がベストフィット関係(強い相関関係)にあることを示す。

 

グラフabをぱっとみて分かること 

ふたつのグラフをぱっと見て気づく特徴と分かることは次の2点だ。

1)     グラフbには傾きがプラスの一次関数の線分がある。→ グラフbの横軸と縦軸の要素は比例する。

2)     グラフab両方でアメリカだけが極端に右上にある。→ アメリカには極端な特徴がある。

 

グラフabの見方

1)     縦軸はグラフab共に同じで、大まかに言えば「不幸の度合い」を示している。問題本文の「健康・社会問題を起こす可能性」で、上に行くほどその国は不幸な人が多いことになる。

2)     横軸はグラフaは「その国のお金持ち度」(問題文の「国民総所得」)、グラフbは「その国の貧富の差(格差)」(問題文の「所得格差」)を表している。

3)     つまり、グラフa では右に行くほどその国はお金持ちだということになり、グラフbでは右に行くほどその国は貧富の差が大きいことになる。そして、グラフbの傾きがプラスの一次関数の線分は「不幸の度合いと貧富の差は比例する」ことを示している。

 

グラフaから分かること

ポイント: お金持ちの国であるかどうかと健康・社会問題の多少はあまり関係がないらしい。お金持ちでない国々よりもアメリカのほうが健康・社会問題が多く、お金持ちの国同士でもアメリカが極端に健康・社会問題が多い。

詳細: アメリカとノルウエーは共に国民総所得が最大(最もお金持ち)だが、健康・社会問題はノルウエーは非常に少なく、アメリカは最悪で、ノルウエーの3倍ある。また、アメリカより健康・社会問題が低くノルウエーと同じ位かそれ以下の国(日本やスウェーデン、オランダ、スイス、フィンランド)はアメリカより国民総所得が低く、その数値もばらばらだ。一方、アメリカとイギリス、ポルトガルの健康・社会問題はほぼ同じ(最悪)だが、国民総所得は異なる(アメリカは最高、イギリスは中間、ポルトガルは最低)。従って、国民総所得(国のお金持ち度)と健康・社会問題(国の幸福度)は相関関係がない。

 

グラフbから分かること

ポイント: 貧富の差が大きいほど健康・社会問題が多い。アメリカは格差が最大で健康・社会問題が極端に多い。

詳細: 日本(貧富の差最小・健康社会問題最小)が左下、アメリカ(貧富の差最大・健康社会問題最大)が右上にあり、この両極端の2国の間に各国が傾きがプラスの一次関数の線分に沿って並んでいる。

貧富の差と社会問題をグラフにすると傾きがプラスの一次関数の線分を引くことができるということは、貧富の差と健康・社会問題には相関関係があり(比例し)、

【貧富の差(小)=健康・社会問題(少)/ 貧富の差(大)= 健康・社会問題(多)】だということが分かる。

 

グラフabから分かるアメリカの特徴 

グラフaからアメリカが世界で最もお金持ちの国であることが分かる一方でグラフbからはアメリカが先進国の中で極端に貧富の差が大きいと同時に健康・社会問題も極端に多いことが分かる。先進国の中でアメリカは最も富んでいるにもかかわらず、超格差社会であるための最も不幸な国なのだ。

 

問1 適切な例を挙げてこれらのグラフが示唆することを1段落で説明してください。 

考え方 「グラフaから分かること」と「グラフbから分かること」参照

 

問2 健康・社会問題指標に含まれる10件の問題のひとつを選んで、日本とアメリカに焦点を当てながら、これらの問題の発生における(日米の)差を、グラフに示された要素以外のどんな要素で説明できそうかを述べてください。解答用紙の所定の場所に英語で書いてください。

考え方 日本とアメリカに焦点を当てるよう指示されていることとグラフで分かることの関係を考えて見る。日本とアメリカはグラフbで正反対の位置にある。日本は貧富の差が少なく健康・社会問題も少ないがアメリカはその逆。つまり、日米の健康・社会問題の差の原因は格差の差なのだが、問題で問われているのは、日米の格差の差以外に考えられる原因。そこで、日米の社会や制度、文化の違いで原因になりそうなものを挙げる。

以下は、考えられそうな(格差の差以外の)原因をキーワードで示したもの。

(1)平均寿命:  医療費及び薬代、国民皆保険制度、銃規制(ただしカナダは銃社会だが銃による殺人件数はアメリカよりずっと少ない)、虐殺・奴隷制・差別の歴史、車社会、規制、離婚・独身率、多人種・多民族

(2)10代の出産:  移民、差別、宗教、個人主義、自由主義、メディアコンテンツ

(3)肥満:  規制、食生活、車社会、消費社会

(4)精神病:  伝統社会の喪失、競争社会、精神病関連ビジネス

(5)殺人:  警察の歴史(奴隷解放後の黒人差別のための組織)伝統社会の喪失、競争社会、銃規制、人種差別

(6)投獄率:  刑務所の民営化、ドラッグ、人種差別、福祉の不足

(7)人間不信:  多人種・多民族、競争社会、個人主義、メディアプロパガンダ

(8)社会の流動性:  利益優先主義、企業家のモラル、雇用形態、アメリカン・ドリーム

(9)教育:  教師数削減、予算削減、人種差別、構造的貧困(諦め)

(10)幼児死亡率  離婚・独身率、移民、人種差別

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