2020年7月31日金曜日

早稲田国際教養学部AO入試 Fordlandia

自動車王フォードの実験都市に関する本の書評です。ユートピアがディストピアであることを示すと同時に資本家フォードの本質も示唆しています。

 

解答のポイント

主題 フォードはフォードランディアという理想の工業都市をブラジルに作ろうとして失敗した。これに関する本『フォードランディア』は非常によく書けているが、フォードランディアの失敗とフォードの資本主義社会に対する理想の敗北を重ね合わせた著者の同情的解釈とフォード自身はそれほどフォードランディアに真剣に取り組んでいなかったという事実がつながっていないのが欠点である。

 

本文該当箇所  5段落 Grandin thus argues that Ford saw the Brazilian interior less as a business opportunity than as a means of starting afreshan unspoiled setting like the Garden of Eden in which rational industrialization could be imposed.  従ってグランディンはフォードがブラジルの内陸を事業の機会としてというよりむしろ新規一転の手段-合理的産業化を課することが可能なエデンの園のような無垢の設定と見なしていたと主張している。  最終段落 Grandin sees in the collapse of the Amazonian project a reflection of the demise of Ford’s particular American Dream. グランディンはこのアマゾンのプロジェクトをフォードの特別なアメリカン・ドリームの終焉の反映と見なしている。 But Ford himself never visited Fordlandia, which suggests it was always more of a distracting hobby than a serious personal commitment. しかしフォード自身は一度もフォードランディアに行かなかった。このことはフォードランディアが常に真剣な個人的専心というより気晴らしの趣味だったことを示している。  In this disconnection lies the weakness of this book. この分離にこの本の弱点がある。The problem is that, for all his flaws, Ford was an industrial genius, while his namesake town was nothing more than a rich man’s folly. 問題は、欠点にもかかわらずフォードは産業界の天才であり、一方彼の名前を冠した街は金持ちの愚行以上の何物でもなかったという点だ。

 

各段落の要旨

第1段落 内因論のポール・ローマーは先進国が管理する憲章都市設立を提案している。

2段落 ポール・ローマーの憲章都市案に対する失敗例としてフォードランディアがある。この町に関する本としてはグレッグ・グランディンの『フォードランディア』がよく書けているのでお勧めだ。

3段落 フォードランディアはブラジルのゴム大農園の中に作られたフォード車部品供給用の町で、アメリカ中西部の町を模したものだった。

4段落 当時フォードは権力の頂点にあったが経済の行き詰まりと権力基盤の弱体化を予感し、資本主義の理想郷創造を南米で試みた。フォードは生産方法の変革により労働者の価値を下げ都市の様相を変えたが、グランディンによれば労働者自体の変革まで目指し企業による公共サービスを夢想し始めた。

5段落 実際には全体主義的支配の温情的形態だった。フォードの独裁主義には選択と消費主義への深い疑念があったが、フォードが先駆けて普及させた生産方式は巨大な消費市場と革新・新奇への欲望をもたらし、功利主義の彼には腐敗と映った。フォードが嫌ったものは現在グローバル化反対運動家が嫌うものと共通点が多い。グランディンによればフォードにとってフォードランディアは事業の機会というよりむしろ心機一転の手段すなわち合理的産業化を押し付けることが可能な無垢の土地だった。

6段落 フォードランディアは大失敗に終わり、跡地は二束三文でブラジル政府に買い戻された。

7段落 フォードランディアの実験は商業的・概念的両面で失敗だった。ゴムの木は病気になり、過酷な環境と労働者の反発に苦労する現地駐在員をフォードは冷遇し、現地の人々を土地から追い出し労働者をだまして過酷な環境で搾取した。飲酒禁止は裏目に出てフォードランディアは無法地帯と化した。

8段落 グランディンはフォードランディアをフォードのアメリカン・ドリームの終焉の反映と見なしているが、フォード自身は一度もフォードランディアに行ったことがないので真剣に取り組んでいたとは言えず、気晴らし、金持ちの愚行に過ぎなかった。この事実とフォードランディアをフォードの個人的専心の対象とするグランディンの解釈との分離がこの本の弱点である。

 

問1 この書評の各段落に最もふさわしい要約を下のAKから選んで下さい。

考え方 上記『各段落の要旨』及び別紙参照 

問2 下のAJからこの書評に書かれていたことと一致する意見4つを選んで下さい。

考え方 上記『各段落の要旨』及び別紙参照 

問3 グランディンの本の長所と短所に関する評価の要約を日本語で解答用紙の回答欄に書いて下さい。

考え方 本文を読みながら関係個所にアンダーラインを引いておき、後でまとめる。単なる和訳のつなぎ合わせではなく、一番重要な箇所を把握してその点を中心にまとめる。

長所: 2段落最後の文  短所: 最終段落(上記『主題』参照)

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